団体の設立目的
国民医療において検体検査は様々な疾患の診断・治療に不可欠な存在ですが、近年遺伝子解析技術の進歩と検 査工程の複雑化が進む背景の中で、従来の法令の建付けの中では検体検査の品質を担保する事が困難となりました。それらの背景から2018年には検体検査の精度の確保に係る医療法等の一部改正(改正法)と厚生労働省令による施行規則(改正省令)の改正が行われました。その法令改正では遺伝子関連・染色体検査が一次分類として設置され、その実施における基準と規制が定められました。特に遺伝子関連・染色体検査の実施において、義務として求めるものとして、精度の確保に係る責任者の配置、標準作業書の作成、作業日誌・台帳の作成と保存、内部精度管理の実施と適切な研修が挙げられました。しかしながら諸外国で普及している検査実施機関の外部精度管理調査(評価)の受検や第三者認定が義務付けられていない事から現在も検査の質の保証は十分とは言えません。
我が国において外部精度管理調査(評価)( External Quality Assessment:EQA)は、EQA提供母体が脆弱な事と運用財源の問題から一般に広く受検できる体制となっていません。その現状を踏まえて、外部精度管理調査(評価)の受検に関して、義務化は見送られ、努力義務として求められることとなりました。しかしながら、先般の新型コロナウイルス感染症等の対応において、PCR等検査の精度確保に関する課題と検査実施・運用に関して脆弱性が明らかになりました。
今後、これまでの検体検査のみならず、新興感染症への対応やがん遺伝子パネル検査、難病遺伝学的検査のような先進医療等で用いられる遺伝子関連・染色体検査の外部精度管理調査(評価)において、検査の精度を確保しつつ、平時に安定した調査の供給が滞りなく行われるように図り、有事には、即時に対応可能な検査体制を構築する必要があります。そこで、海外の先行事例を参考に、外部精度管理調査(評価)と教育・育成を担う恒常的な組織として、公益性のある社会活動が可能で、活動の継続性・安定性・組織力の向上を図れる非営利活動法人としての設置が必要と考えました。さらに将来的には、あるべき姿として、今回設立する日本遺伝子関連検査品質保証・教育機構が軸となり、ステークホルダーとなる関連企業・団体等の参画の下にコンソーシアム形式で運営する事が必要と考えています。